第153回日本獣医学会学術集会

会長あいさつ

第153回日本獣医学会学術集会
会 長  山 田 章 雄
(国立感染症研究所獣医科学部部長)


 東日本大震災により被災された日本獣医学会会員・関係者はじめ多くの皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 これまでに経験したこともない巨大な地震の余波は未だに衰えておりません。心配されておりました電力不足は今のところ大きな影響を及ぼすまでには至っておりませんが、今後も益々の節電努力が求められるでしょう。本大震災の影響は様々なところに及び獣医界も例外ではありませんでした。本年3月末に東京農工大学で開催が予定されておりました第151回日本獣医学会学術集会は、残念ながら開催することが叶いませんでした。福島第1原子力発電所から漏れ出した放射性物質による牛乳の汚染や肉牛の内部被曝は、食品の安全性を求める国民に大きな影を落としました。一方、この大震災の最中にも、昨年秋頃から各地で発生が相次いだ高病原性鳥インフルエンザの発生は続いていました。
 このような困難な状況ではありましたが、第152回日本獣医学会学術集会は大阪府立大学の主催により開催準備が滞りなく整えられました。そして第153回学術集会は、私ども国立感染症研究所獣医科学部がお世話をし、さいたま市大宮ソニックシティを会場として開催の運びとすることができました。本大会は「人、動物、環境、いずれの健康もそれぞれが健康でなければ維持することができない、従ってこの三者の健康を実現していくことが真に健康な世界を築き上げるために重要である」とする、One Healthをキーワードにしたいと考えております。司宰機関シンポジウムでは世界保健機関、国際獣疫事務局、国連食糧農業機関から講師をお招きし、One Healthの実践が如何に私達の健康を確保するために重要であるか討論できればと考えております。
 地球人口は間もなく70億人に到達すると言われています。これだけの人々に十分な食糧を供給するために、2010年に比較し2019年には鶏肉が29.2%、牛肉14.4%、豚肉は23.5%の増産になると予測されています。牛乳も25.2%の増産が必要と見積もられています。これらの増産には当然のことながら飼養する家畜数の増加が伴います。家畜の飼料生産のための耕作地や牧野の拡大、畜舎の増加も必至だと思われます。即ち人も家畜も殖え続けることが予想され、その接点は益々拡大することが予想できます。このような状況を踏まえるとOne Healthの実践の重要性はもとより、その実践を支える獣医師の重要性は、強調しすぎることはないと考えられます。本大会がOne Health理念の実践を通した「健全な地球」の実現に向けたスタートとなることを期待するとともに、多くの皆様のご参加を心からお待ち致しております。